2022年9月30日に東証に「GXNDXカバコ(2865)」が上場しました。
- GXNDXカバコとはどのようなETFか
- 下落時にはどのくらいのリスクがある商品なのか
GXNDXカバコとは?
正式名称を「グローバルX NASDAQ100・カバード・コール ETF」と言います。
高分配・毎月分配で米国株式投資家に人気の高いQYLDがありますが、GXNDXカバコはQYLDに投資する円建てのETFです。
GXNDXカバコの特徴
GXNDXカバコはQTLDに投資する円建てのETFですので、GXNDXカバコもQYLDと同じく以下のような特徴があります。

カバード・コール戦略ってなんやねん?と思う方も多いでしょうがそれは後述するとして、日本株は配当金の入金が6,12月に固まりがちですので毎月分配金が入る商品に円建てで投資することができるのは大きなメリットと感じる方も多いのではないでしょうか?
- GXNDXカバコはQYLDに円建てで投資するETF
- 特徴は「高い潜在インカム」「毎月分配」「カバード・コール戦略へのアクセス」
QYLDの組入れ銘柄
GXNDXカバコはQYLDに円建てで投資するETFですので、組入れ銘柄はQYLDと同じです。
また、QYLDはQQQ(NASDAQ100指数連動ETF)とほぼ同じ銘柄を組入れているため、GXNDXカバコはNASDAQ100の指数に連動する商品ということが分かります。
QYLDはGAFAMを中心とした情報技術・通信サービスを提供する名だたる企業で構成されています。
QYLDの組入れ銘柄上位10社
企業名 | ティッカー | ファンド割合 |
アップル | AAPL | 13.61% |
マイクロソフト | MSFT | 10.54% |
アマゾン・ドットコム | AMZN | 6.90% |
テスラ | TSLA | 4.06% |
アルファベット | GOOG | 3.70% |
アルファベット | GOOGL | 3.57% |
メタ・プラットフォームズ | META | 2.72% |
エヌビディア | NVDA | 2.48% |
ペプシコ | PEP | 2.36% |
コストコホールセール | COST | 2.02% |
カバード・コール戦略とは?
カバード・コール戦略とは、オプション取引を利用した戦略です。
現物株式を保有しながら、その現物株式のコールオプションの売りポジションをとる戦略のことをカバード・コール戦略と言います。

- コールオプションとは、一定期間後にあらかじめ決めておいた価格で株式を購入する権利を売却すること
- 投資家は権利行使時に株式購入の権利を行使するかどうかを判断できる
- 投資家はコールオプションを購入するために、オプションプレミアムという手数料のようなものを支払う必要がある
コールオプションを売り建てることにより、値上がりした場合の値上がり益は受け取れませんが、オプションのプレミアムを受け取ることで儲ける戦略です。

この戦略ではファンドは株価の値上がり益を受け取ることができませんので、GXNDXカバコやQYLDの投資家への分配金はオプションプレミアムから支払われることになります。
GXNDXカバコやQYLDの分配金はどうやって決まる?
ファンドはカバード・コール戦略により株価の値上がり益を放棄するが、オプションプレミアムによって利益を得て、GXNDXカバコやQYLDへの投資家への分配金を支払うことが分かりました。
では分配金の金額はどのように決まるのでしょうか?
オプションプレミアムと分配金の関係
2022年11月8日にGLOBAL X社より発表されたETFの収益分配金見込み額のお知らせによると、GXNDXカバコの初回の収益分配金見込額は、100口につき700円00銭とのことでした。

それではこの分配金額はどのように決定されるのかを解説していきたいとおもいます。
GXNDXカバコやQYLDの分配金は、毎月ファンドにオプションプレミアムがどれだけ入るかによって決まります。
GXNDXカバコやQYLDでは、オプションプレミアムが株価の2%以上とれた場合は株価の1%、オプションプレミアムが2%未満だった場合はオプションプレミアムの半分を分配金とすることになっています。
オプションプレミアム | 分配金 |
株価の2%以上 | 株価の1%(毎月) |
株価の2%未満 | オプションプレミアムの半分 |
コールオプションの売れ行きが好調で、毎月株価の2%以上のオプションプレミアムがファンドに入った場合はなんと最大で年12%の分配金をいただくことができます。
ただし、毎月株価の2%以上のオプションプレミアムが入ったとしても、分配金も株価の1%ですので、株価が下落している場合は同じ1%でも分配金の額は少なくなることに注意が必要です。
- GXNDXカバコやQYLDの分配金は毎月最大で株価の1%(年12%)
- 分配金は株価上昇時には増加するが、株価下落時には減少する
オプションプレミアムはどんなときに高くなる?
オプションプレミアムは市場のボラティリティ(変動率)と深く関わっています。
ボラティリティが大きくなるとオプションプレミアムも高くなる正の相関関係があります。
また、ボラティリティは株価の急上昇局面や暴落局面で大きくなり、特に暴落局面ではかなり大きくなっています。
上述した通り、QYLDはNASDAQ100を組入れたETFですので、NASDAQ100のボラティリティを見ることでオプションプレミアムがどの程度かを図ることができ、またNASDAQ100のボラティリティを図る指標として「VXN指数」があります。
コロナショック時の例では、VXN指数は2020年1月には14.97でしたが、2020年3月には63.85まで上昇しました。

ボラティリティが大きい時期には、一定期間後の株価を推測することが非常に困難になりますので、その分オプションプレミアムが高くなるという理屈です。
- オプションプレミアムはボラティリティが大きいと高くなる
- QYLDはNASDAQ100のボラティリティに影響を受ける
- NASDAQ100のボラティリティを示す指標にVXN指数がある
- VXN指数は株価の急上昇局面や暴落局面で大きくなる
GXNDXカバコやQYLDの下落時の株価シミュレーション
GXNDXカバコやQYLDは高分配のETFですので、多少株価が下落しても分配金でまかなえてしまいそうな気がしますが、本当にそうでしょうか?
上述した年12%の分配金という言葉は投資額に対する利回りではない点に注意が必要です。
分配金はあくまでその時点での株価に対するパーセンテージですので、株価が下がれば当然分配金も減少することになります。
また、カバード・コール戦略をとるETFの株価が下落してから上昇する際の株価の戻り方には特徴があります。
GXNDXカバコとQYLDは同じ値動きをするはずですので、今回はQYLDと、QYLDとほぼ同じ銘柄を組入れているQQQでの株価の動きを比較してみたいと思います。

$200だったQQQの株価が50%下落し、その後50%上昇したと仮定します。
このとき$20だったQYLD(GXNDXカバコ)はどのように値動きするでしょうか?
QQQの株価は$200⇒$100⇒$150と変動しますが、QYLD(GXNDXカバコ)はカバード・コール戦略をとっていますので、QQQと同じ値動きというわけにはいきません。
まず、株価の下落時にはQYLDの価値はそのまま50%値下がりしますが、オプションプレミアムの2%がありますので、$20の2%($0.4)が収入となります。ここから$20の1%($0.2)を分配金として支払いますので、このときのQYLDの価値は$10.2($10+$0.4-$0.2)となります。
そして、株価が上昇した際にはコールオプションを売却しているため、あらかじめ決めていた$10.2で売却する必要があります。するとこのときのQYLDの価値は$10.302($10.2+$0.204-$0.102)となります。
株価が50%も上昇しているにも関わらず、QYLDの価値は1%しか上昇していないのです。
つまりQYLDやGXNDXカバコは、1カ月前の株価での売却を約束するカバード・コール戦略をとっているため、下落時には普通に下落するが、上昇時にはなかなか価値が上昇しにくい商品であると言えます。
GXNDXカバコのメリット・デメリットまとめ
最後に、GXNDXカバコのメリットとデメリットをまとめました。
メリット | デメリット |
・とにかく高分配 ・毎月分配 ・NASDAQ100という巨大企業に投資 | ・株価の戻りが遅い ・分配金額は市況により大きく変化する |
高分配の裏にはこのような仕組みがあるということを知ることで、投資判断の参考になれば幸いです。
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